重労働を軽減!漁獲物の搬送・水揚げを助ける技術
漁獲物の搬送・水揚げ、その重労働をどうにかしたい
漁を終え、船いっぱいの漁獲物を港へ持ち帰った後も、大変な作業が続きます。船から陸へ、そして市場や処理場へと漁獲物を運び上げる「水揚げ」と、そこからの「搬送」です。これらは体力的に非常に負担の大きい作業であり、特に獲れた量が多い日や魚が大きい日には、腰や腕に大きな負担がかかります。
長年漁師を続けてこられた皆様の中には、この作業のつらさを身をもって感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。また、後継者不足が進む中で、一人で、あるいは少人数でこの重労働をこなさなければならない状況も増えています。
しかし、この水揚げ・搬送作業も、新しい技術の力を借りることで、ぐっと楽に、そして効率的にできる可能性があります。伝統的な手法を尊重しつつ、技術で作業を「補強」し、持続可能な漁業を目指しましょう。
技術が水揚げ・搬送作業にもたらす変化
水揚げや搬送の作業に技術を導入することで、主に以下のような変化が期待できます。
- 身体的な負担の軽減: 重量物の持ち運びや繰り返し動作が減り、腰痛や関節痛のリスクを低減できます。
- 作業時間の短縮: よりスムーズかつ迅速な作業が可能になり、次の作業に取り掛かるまでの時間を短縮できます。
- 安全性の向上: 重いものを無理な姿勢で運ぶことによる事故のリスクを減らせます。
- 人手不足への対応: 少人数でも多くの漁獲物を効率的に扱えるようになります。
それでは、具体的にどのような技術や機器が役立つのかを見ていきましょう。
水揚げ・搬送を助ける具体的な技術と機器
ここでは、比較的導入しやすく、現場での効果が期待できる技術や機器をいくつかご紹介します。
1. 小型クレーン・電動ウインチ
船上や岸壁に設置できる小型のクレーンや、電動のウインチは、重たいコンテナや魚箱を吊り上げて移動させるのに非常に有効です。手で抱えたり、複数人で運んだりするよりも、格段に身体への負担が少なくなります。
- メリット: 重量物の垂直・水平移動が容易になる、身体負担が大幅に軽減される、安全性が向上する。
- デメリット: 設置場所や電源の確保が必要、初期投資がかかる、操作の習得が必要な場合がある。
- コスト感: 種類や能力によりますが、簡易な電動ウインチであれば数十万円程度から、小型クレーンは設置工事も含めると百万円以上になることもあります。
2. 電動アシスト付き台車・運搬機
港や市場内での漁獲物の運搬に役立つのが、電動アシスト付きの台車や運搬機です。重い荷物を載せても、電気の力で楽に運ぶことができます。キャタピラ式のものを選べば、多少の段差や傾斜のある場所でも安定して運搬できます。
- メリット: 重い荷物の水平移動が楽になる、体力的な消耗を抑えられる、一人での運搬能力が向上する。
- デメリット: バッテリー充電が必要、設置場所によっては利用できない場合がある、操作に慣れが必要。
- コスト感: 形状や積載量によりますが、十数万円から数十万円程度で購入できるものが多いです。
3. 簡易コンベアシステム
船上から岸壁へ、あるいは岸壁からトラックへの積み込みなど、一定の場所で繰り返し荷物を移動させる場合に有効なのが簡易コンベアシステムです。電動で動くコンベアに乗せるだけで、自動的に荷物が運ばれます。使わないときは折りたたんで収納できるタイプもあります。
- メリット: 連続的な荷物の移動が非常に効率的になる、人手をかけずに搬送できる。
- デメリット: 設置場所や移動経路が限定される、初期投資が必要、定期的なメンテナンスが必要。
- コスト感: 規模や長さによりますが、数十万円から導入可能なものもあります。
導入を検討する際のポイント
これらの技術や機器の導入を検討する際は、以下の点に注意すると良いでしょう。
- ご自身の漁業規模や扱う漁獲物の量・種類: どのような技術が最も効果的か、ご自身の状況に合わせて検討が必要です。
- 作業場所の環境: 船の大きさ、岸壁の構造、運搬経路の地面の状況(平坦か、段差があるかなど)によって、適した機器が変わります。
- 初期投資と費用対効果: 導入にかかる費用と、それによって得られる身体的負担の軽減、作業効率の向上といった効果を比較検討することが重要です。補助金制度なども活用できないか調べてみる価値はあります。
- 操作の習得とメンテナンス: 新しい機器は操作を覚える時間が必要です。また、長く使うためには定期的なメンテナンスも欠かせません。
まとめ:技術でより長く、より楽に
漁獲物の水揚げや搬送は、漁業の中でも特に体力を使う部分です。しかし、ここでご紹介したような技術や機器を活用することで、この重労働を大きく軽減し、より長く、安全に漁業を続けることができるようになります。
技術は伝統的な漁法に取って代わるものではありません。むしろ、漁師の皆様の経験や知識を活かしながら、つらい部分を「助けてくれる」存在です。導入には多少のハードルがあるかもしれませんが、小さな一歩からでも、技術の活用を検討してみてはいかがでしょうか。体力的な負担が減ることは、後継者にとっても魅力的な要素となり、漁業全体の未来にもつながるはずです。