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ドローンで漁場を探す 安全・効率化に役立つ新しい技術

Tags: ドローン, 効率化, 安全性, 漁場探索, 最新技術

伝統漁法に長年携わってこられた皆さまにとって、新しい技術と聞くと、難しそう、自分には関係ない、と思われるかもしれません。しかし、時代とともに海の状況や漁業を取り巻く環境は変化しており、経験に加え、新しい技術をうまく取り入れることで、より安全に、そして効率的に操業できる可能性があります。

今回は、近年様々な分野で活用が進んでいる「ドローン」が、私たちの漁業にどのように役立つのかをご紹介します。ドローンは空を飛ぶ小さな無人機ですが、これを使うことで、これまでとは全く異なる「空からの視点」を得ることができるのです。

ドローンが解決できる漁業の課題

ドローンを漁業で活用することで、以下のような課題解決や効率化が期待できます。

漁場探索の効率化

広い海の中から魚群を探すのは、長年の経験が必要な難しい作業です。ドローンを使えば、船上からでは見えない広範囲を空から短時間で確認できます。例えば、定置網周辺の魚の集まり具合や、海面に現れる鳥山などをいち早く発見できる可能性があります。

安全性の向上

漁に出る際の安全確認にも役立ちます。出港前や悪天候になりそうな時、ドローンを飛ばして港の出口付近や航路上の状況を確認することで、見えない危険を早期に把握できます。また、離れた場所に仕掛けた漁具の様子を、船を近づけすぎずに確認することも可能です。

漁船や漁具の見守り

沖に停めている漁船や、遠方に設置した養殖施設、あるいは流された可能性のある漁具などを、港や自宅からドローンを飛ばして確認するといった使い方も考えられます。これは、特に一人で作業することが多い方や、高齢の漁師さんにとって、労力や燃料費の削減に繋がる可能性があります。

記録と情報共有

ドローンで撮影した空撮映像や写真は、漁場の状態、魚群の様子、作業風景などを記録として残すことができます。これらの記録は、その後の操業計画に役立てたり、若い世代への技術伝承や、漁協内での情報共有にも活用したりできるでしょう。

漁業における具体的なドローンの活用例

ドローン導入のメリット・デメリット

メリット

デメリット

導入のハードルと検討すべきこと

ドローンの導入にあたっては、いくつかのハードルがあります。

コスト: 機体の種類によって価格は大きく異なりますが、漁業用途である程度の性能を求める場合、数十万円程度の初期費用がかかる可能性があります。加えて、バッテリーやプロペラなどの消耗品、万が一に備えた保険なども考慮する必要があります。

操作: 最近のドローンは操作が簡単になってきていますが、安全に、そして意図した場所に飛ばすためには練習が必要です。ドローンスクールや講習会に参加することも検討できます。簡単な自動飛行機能(設定したルートを自動で飛ぶなど)を持つ機種を選ぶと、操作の負担を減らせるかもしれません。

法規制: ドローンは航空法の規制対象です。人口集中地区の上空や空港周辺など、飛行が制限されている場所があります。また、特定の場所で飛行させるためには国土交通省への許可・承認申請が必要になる場合があります。導入を検討する際は、地元の漁協や専門家、販売店に相談し、必要な手続きを確認することをおすすめします。

メンテナンス: 海辺での使用は、塩分や湿気による故障のリスクを高めます。使用後の手入れや、定期的な点検をしっかりと行うことが長く使うためには重要です。販売店のサポート体制なども確認しておくと良いでしょう。

まとめ

ドローンは、これまでの漁業にはなかった「空からの視点」をもたらしてくれる新しい技術です。漁場探索の効率化、作業の安全性向上、離れた場所の確認など、様々な場面でベテラン漁師の経験を補強し、より良い漁業につながる可能性を秘めています。

もちろん、ドローンは万能ではありません。導入には費用や操作の習得、法規制の理解など、いくつかのハードルがあります。しかし、まずは比較的安価で操作の簡単な機種から試してみる、あるいは特定の目的(例えば安全確認だけ)に絞って活用を検討するなど、できることから始めてみる価値は十分にあると考えられます。

伝統の技と、新しい技術であるドローンの力を組み合わせることで、未来に向けた安全で持続可能な漁業の形が見えてくるかもしれません。