伝統漁法テックナビ

一人でも安心して漁に出るために 体調を見守る新しい技術

Tags: 体調管理, 安全対策, 見守り技術, ウェアラブル, 伝統漁業

経験豊富な漁師の皆様へ 技術で「安心」をプラスする

長年、海と共に歩んでこられた経験豊富な漁師の皆様にとって、漁という仕事はまさに人生そのものかもしれません。培われた知識と勘は、何物にも代えがたい宝です。しかし、年齢を重ねるにつれて、体の負担や、万が一の事態に対する不安を感じることもあるかと存じます。特に、一人で漁に出る機会が増えているという声も聞かれます。

「沖合で体調が悪くなったらどうしよう」「もし船上で何かあったら、家族に心配をかけてしまう」――そういった不安は、安全な操業を続ける上で大きな懸念事項です。今回は、そうした不安を軽減し、より安心して、長く漁を続けるために役立つ可能性のある、体調を見守る新しい技術についてご紹介したいと思います。

漁師の体調管理が重要な理由と現状の課題

漁師の仕事は、自然相手の過酷な労働です。体力や集中力が必要とされる場面が多く、天候や海の状況によっては、予期せぬ危険に遭遇することもあります。特に年齢を重ねると、若い頃には感じなかった体の変化に気づくこともあるでしょう。

こうした課題に対し、経験に裏打ちされた注意深さや事前の準備はもちろん重要ですが、それに加えて、技術がどのように貢献できるかを探っていきます。

体調を見守る技術とは

ここでご紹介する「体調を見守る技術」とは、主に漁師自身の体の状態を、センサーやウェアラブルデバイス(身につける小型機器)を使って継続的に計測・記録し、そのデータを活用することで、安全な操業をサポートするものです。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

これらの技術単体だけでなく、取得したデータをスマートフォンアプリや陸上のシステムと連携させることで、体調の変化を可視化したり、設定した異常値(例: 心拍数が異常に高い/低い、長時間動きがないなど)を検知した場合に、事前に登録した連絡先(家族や漁協など)に自動で通知を送る、といった仕組みも考えられます。

技術導入によるメリットとデメリット

体調を見守る技術を漁業に取り入れることで、以下のようなメリットが期待できます。

一方で、デメリットや課題も存在します。

導入を検討する際のポイント

もし体調を見守る技術の導入に興味をお持ちになったら、以下の点を考慮して検討してみてはいかがでしょうか。

  1. 目的を明確にする: 「単独操業時の安全確保」「日々の健康管理」「家族への安心提供」など、主な目的を考えると、選ぶべきデバイスの種類が見えてきます。
  2. 使いやすさを重視する: ご自身の技術スキルや、日々の作業スタイルに合わせて、操作が簡単で、装着していても邪魔にならないものを選びましょう。可能であれば、購入前に実機に触れてみることをお勧めします。
  3. 防水・耐久性を確認する: 漁の現場は水や塩分、衝撃にさらされる可能性があります。それに耐えられる仕様であるかを確認しましょう。
  4. 必要な機能があるか: 心拍数だけ知りたいのか、睡眠時間も測りたいのか、GPSで位置情報も送りたいのかなど、必要な機能をリストアップしてみましょう。
  5. 通信方法と費用を確認する: スマートフォン連携が必要か、デバイス単体で通信できるか、月々の通信費用はいくらかかるかなどを確認します。
  6. サポート体制: 購入後の設定方法や、故障時の対応など、販売店やメーカーのサポート体制も重要な検討要素です。

いきなり本格的なシステムを導入するのではなく、まずは比較的安価な活動量計などを試しに使ってみて、ご自身の生活や仕事の中でどのように活用できそうか感覚を掴んでみるのも良いかもしれません。

まとめ:経験に技術の安心をプラスする

漁師としての長年の経験と知識は、何よりも尊い財産です。そして、新しい技術は、その尊い経験を否定するものではなく、むしろ「補強」し、これからの漁業人生をより豊かに、そして何よりも「安全」にするための道具となり得ます。

体調を見守る技術は、まだ進化の途上にあるものもありますが、正しく理解し、ご自身の状況に合わせて活用を検討することで、単独操業時の不安を軽減し、ご自身やご家族に「安心」をもたらす可能性を秘めています。

技術はあくまでサポート役です。最も大切なのは、ご自身の体調と向き合い、無理のない操業を心がけること。その上で、新しい技術が提供する「見守り」という安心感を、日々の漁にお役立ていただければ幸いです。